セミナー

談話会

タイトル 一次元力学系の大偏差原理
開催日時 2015年10月2日 17:00~18:00 ※今回は,談話会前のコーヒータイムは実施いたしません.
主催者
講演者 高橋 博樹 氏 (慶應義塾大学)
場所 矢上キャンパス14棟6階631A/B
内容 力学系とは、決定論的な時間発展の法則により変化する系を数学的に表現したものであり、 常微分方程式や差分方程式(写像の反復合成)はその典型である。力学系理論では、これらの 方程式の解の漸近挙動、およびそのパラメーター依存性を定性的に調べることを目標とする。 位相的な手法による力学系の解析はPoincareによる三体問題の研究に始まり、その後Birkhoffら によって発展させられ、構造安定性を核とする60年代のSmaleらの研究と応用分野での「カオス」 の発見により、一つの確立した分野となった。 90年代以降の力学系理論の最も重要な課題の一つは構造不安定な力学系の研究にある。 特に、具体的な力学系についての精密な研究が重要であり、ロジスティック写像x \mapsto 1-ax^2 などの一次元力学系がMilnor, Thurston, Sullivan, Yoccoz, AvilaらFields medalistを含む多くの 数学者によって研究された。本談話会でも、区間[0,1]からそれ自身への可微分写像が生成する 一次元力学系を取り上げる。 大偏差原理は「大数の法則」「中心極限定理」に次いで「確率論の第3の原理」とも呼ばれ、 測度が集中する点からの``ずれ"を問題にする。DonskerとVaradhanにより明確に定式化されたのが 70年代であり、まだ新しく、この原理に支配されることが確認された現象は今も広がりつつある。 最近になって、鄭容武氏(広島大学)、Juan Rivera-Letelier氏(University of Rochester)との 共同により、きわめて広いクラスの一次元力学系について大偏差原理が成立することが証明 できたので、この結果について予備知識をあまり仮定せずに発表したい。証明の中心をなす 「区間の引き戻しにより、馬蹄パイのような構造をたくさん作る」というアイディアが 少しでも伝われば幸いである。
資料
URL

PAGETOP