大学院生向け

1. 教育・研究方針

数理科学とは

数理科学とは、数学および、数学と諸科学との関係領域に構築された研究分野を総称するもので、数学理論(いわゆる純粋数学)の追求と同時に、現実現象の記述(抽象化・定式化・モデル化)の開発にも重点を置いています。 研究対象は極めて抽象度の高い純粋数学から、具体的な現象のデータを扱う統計学まで、多岐にわたります。 また、非線形現象、相転移、液晶や超伝導などの理学や工学と関連した研究、数理ファイナンスなども研究対象です。

主な教育・研究主題

数理科学専修における研究分野は、高度に抽象化された基礎数理分野から、諸科学への応用に直結する応用数理分野までの幅広い分野をカバーしています。 具体的には、本専修は、次のような分野を核とします。
代数学 幾何学 数理解析 確率論 統計学 離散数学 計算数学

教育方針

数理科学専修の修士課程の学生に望むことは、まず自分の力で考えることです。 その上で、読む-- 書く-- 話すの3つの能力を身につけてほしいと思っています。

  1. 読むこと
    修士課程における第一の目標は、数学や数理科学に関する基礎をきちんとマスターすることです。 その分野においてどのようなことが問題とされ、研究されているかを、本や論文を読むことによってきちんと把握して下さい。 そのための指針となるような講義も開講されています。
  2. 書くこと
    修士課程修了のためには、修士論文を提出する必要があります。 修士論文は修士課程在学中に勉強・研究して得た多くの知識を使って、新しい問題に取り組み、十分に研究し、しっかりした、質の高いものを書きあげて下さい。
  3. 話すこと
    普段のセミナーを通じて、数理科学専修の学生さんたちの発表能力は大いに鍛えられます。 指導教員の推薦があれば、研究集会や学会で発表することも大いに推奨します。課題研究発表会、修士論文発表会においても十分に準備をして、多くの人達に理解してもらえるような発表を期待しています。

履修および研究について(修士課程)

慶應義塾大学理工学研究科は、2016年度から「主専門-副専門制」を柱とする新カリキュラムに移行しました。新カリキュラムは、2016年4月以降の入学者から適用されます。
詳しくは、「理工学研究科 修士課程カリキュラムについて」をご覧ください。

数理科学の研究指導について

数理科学専修における大きな特徴の一つは、指導教員によっておこなわれるセミナーです。 これは学生と指導教員との間で1対1もしくはそれに近い小人数で行われます。 学生はこのセミナーを通して問題の定式化やその解決に必要な方法を学びます。 具体的には課題研究と特別研究第1がその科目です。

課題研究科目

入学して数理科学専修所属の教員の中から諸君の指導教員が決まると、セミナーを通して指導を受けることになります。 最後に、そこで学んだ(あるいは研究した)内容をまとめたレポートを提出し、課題研究発表会においてプレゼンテーションを行うことにより、基礎理工学課題研究の単位を取得します。 これは、その後に本格的な研究を始める出発点となるもので、課題研究を含む所定の単位数を取得することにより、修士論文着手が認められます。
標準的には、入学時から一年間かけて課題研究科目の単位を取得しますが、指導教員が十分な学力を認め、修士論文作成のための研究に進んでもよいと判断した場合には、入学から半年で課題研究の単位を取得し、修士論文にとりかかることもできます。

特別研究第1

課題研究科目を履修し修士論文着手が認められたら、基礎理工学特別研究第1を履修します。 これは、修士課程修了に必要な修士論文の作成に関する指導を受けることを目的にした科目です。 修士論文を作成し、修士論文発表会で発表することで修士論文の審査を受けることになります。 これに合格すれば基礎理工学特別研究第1の単位がつき、修士の学位を取得することになります。
数理科学専修では、修士(理学)と修士(工学)の学位を取得することができます。 どちらの学位にするかは、指導教員とよく相談して決めてください。
入学から修士課程修了までは通常2年ですが、特に業績や能力が認められた場合には、課題研究や特別研究第1を半年で取得し、合計1年半または1年の在学期間で修了することもできます。

2.前期博士課程(修士課程)の履修科目と修了要件

今年度の履修に関する注意を述べておきます。 2019年度から主専門・副専門を置く新しいカリキュラム制度に移行しました。 詳しくは、履修案内を参照してください。

  1. 修了に必要な単位数は30単位です。
  2. 特別研究科目の履修のためには、16単位以上を取得することが必要です。
  3. 指導教員が所属する専修の主専門科目から8単位を取得することが必要です。
  4. 副専門の修了要件は、指定科目群の中から定められた単位数(4、6または8単位以上)を取得することです。
  5. 課題研究科目は第1学年で必ず履修してください。
  6. 学部4年時に先取履修した科目を、指導教員の許可により主専門単位に含めることも可能です。 ただし、学部4年次に先取りした科目は、副専門修了に含めることはできません。 他専攻の専修の副専門を選択することも可能です。
  7. 集中して知識を得るために集中講義を年間5科目程度開講します。

推奨する科目

履修に当たっては、指導教員の先生とよく相談をして、助言を受けて下さい。 下記の科目の講義要綱・シラバスは、次のページで検索することができます。

1.通常講義(2024年度)

履修に当たっては、指導教員の先生とよく相談をして、助言を受けて下さい。 下記の科目の講義要綱・シラバスは、次のページで検索することができます。

  • 春学期 計算数学特論A 田村 明久
  • 春学期 幾何学特論A 早野 健太
  • 春学期 統計科学特論A 南 美穂子
  • 春学期 確率特論B 高橋 博樹
  • 春学期 数理科学特論A 服部 広大
  • 秋学期 関数方程式特論A 井口 達雄
  • 秋学期 数理科学特論B 勝良 健史
  • 秋学期 数理ファイナンス特論 白石 博
  • 秋学期 代数学特論A 田中 孝明
  • 秋学期 確率特論A 種村 秀紀
  • 秋学期 離散数学特論 小田 芳彰

審査対象学位の種類

数理科学専修では、後期博士課程修了対象者に対し 1)博士(理学)、2)博士(工学)の 両方の審査を行います。学位の申請にあたっては、指導教員と良く相談をして、学位の種類を決めてください。

修士論文発表会のアブストラクト

修士論文発表会に先立ち、アブストラクトの提出が必要です。詳細は別途掲示等で指示があります。
アブストラクト作成用のLaTeXファイル一式:ダウンロード(tar.gz)ダウンロード(zip) 2013.1.28掲載
(これらのファイルは標準的なもので、使用を義務付けるものではありません。)

修士修了後の進路について

修士修了後の進路は各自にとって大切なことなので、十分考えたうえで決定してください。 一般企業のなかにも数学や数理科学を活用する分野が数多くあります。 修士課程で得た実力を社会のなかで発揮されることを望みます。
修士課程修了後、さらに研究を深めるために、後期博士課程に進学する道もあります。 これは、修士課程で行った研究をさらに進め、一人前の研究者となるための養成コースです。 数理科学専修からは多くの研究者が育っています。
修士課程修了後の進路については指導教員と十分相談することを奨めます。 なお、就職委員の先生も相談にのってくれますので、よく相談してください。

その他の相談

修士課程在学中のさまざまな問題については、基本的には担当の指導教員に相談して下さい。
必要があれば、専修主任、大学院学習指導の先生の他、指導教員以外の数理科学専修所属の先生方にも相談をしてください。メールでも構いません。
その他、必要事項についてはK-LMSや掲示板を通じて連絡します。
K-LMSからの連絡を常に確認できるようにしてください。
また、数理科学専修掲示板(ピロティー)、14棟6階学生室掲示板をよく見てください。

数理科学専修での利用施設

数理科学専修では大学院生が利用できるさまざまな施設を用意しています。これらを有効に使ってください。

  1. 図書室、理工学メディアセンター
    数理科学科内には独自の図書室があり、洋書、雑誌を揃えています。これらは大学院生が自由に使えるものです。利用規定については図書室の事務で聞いて下さい。また、理工学メディアセンターにも、数理科学に関する文献が数多く収納されています。これらも利用することを奨めます。
  2. 大学院生室、ロッカー
    数理科学専修の大学院生のために、院生室、机、ロッカーが用意されています。 数理科学科受付で聞いてください。
  3. コピー
    数理科学専修の大学院生は指導教員の許可のもと、数理科学科内でコピーをとることができます。また、理工学メディアセンターでのコピーも指導教員の許可のもとでとることができます。詳しくは、指導教員に尋ねてください。
  4. 旅費の補助
    数理科学専修の大学院生が学会やシンポジウム等で発表をする時、一定の枠内で旅費を補助します。また、指導教員の指示により、学会等の参加のために旅費の補助を行うこともあります。これらについては、指導教員に尋ねて下さい。
  5. セミナー室の利用
    数理科学科内にあるセミナー室は空室時には、セミナー等のために自由に使えます。これについても、数理科学科受付に尋ねてください。

3.後期博士課程の修了要件

数理科学専修では、後期博士課程の学生の教育を積極的に行っていきます。 後期博士課程の学生には、修士課程で修得した専門知識や指導を受けた研究の方法を基礎として、自立して各々の研究を推進していくことを期待します。 指導教員および数理科学専修は、各学生の研究への助言や指導を精力的に行っていきます。

後期博士課程の修了判断

数理科学専修においては、後期博士課程の学生に対して、以下のことを主な目的として、教育を行います。

  1. 高度な研究を行っていける能力を養うこと
  2. 数理科学の分野で明確な成果を得ること
  3. 指導者として社会に貢献できる資質を養うこと

後期課程博士の修了判断について

学位申請を希望する学生に対しては、申請前に予備セミナーを行います。 予備セミナーに合格すると、予備審査に進むことができます。 予備審査に合格して、所定の書類を提出すると本審査となります。
学位取得については、指導教員と忌憚なく相談してください。 学位取得の資格がある学生には短期修了を推奨します。 数理科学専修は、研究成果をできるだけ広く公表し、評価を得るべきであると考えています。学生諸君には、各自の研究成果をその研究分野できちんと評価されている学術誌等に積極的に投稿することを奨励します。
学位取得のための標準の条件は、相当する研究分野において一定の評価が得られている学術雑誌に、学位論文の骨子となっている、欧文論文を含む学術論文が2篇以上掲載もしくは掲載受理(アクセプト)となっていることです。
骨子になっている論文は最終試験までに掲載受理(アクセプト)となっていることが必要です。 また、以下の場合についても、修了要件をみたすと認めることがあります。

  1. 1編の論文だけであっても、この基準に相当して余りあるような、優秀な成果が単著として得られた場合
  2. 1編目の学術論文はすでに掲載または掲載受理が決定されていて、投稿済みの2編目の学術論文の正確さが、学位論文の審査委員会により認められた上で、その内容が、
    1. 学術雑誌の査読者による中間査読結果として高く評価されている、
    2. 当該専門分野における国際会議報告集等で公表済みである、
    など国内外の当該専門分野からすでに高い評価を得ていることが公に認められ、2編目の論文が早晩学術雑誌に出版されると十分に判断できる場合。

なおここで、数理科学専修が考える一定の評価が得られている学術雑誌とは、例えば

  1. 米国数学会が出版しているMathematical Reviewsにおいてレビューを受けている欧文論文雑誌
  2. 専門学会が出版または編集を行っている学術雑誌

などです。成果の公表には、国際的に評価を受けることが望ましいので、欧文論文の出版や国際会議での発表を積極的に奨めます。
上記の修了要件が満たされた学生は、指導教員に学位申請について相談し、学位予備審査のためのアドバイスを受けてください。

学位審査のプロセス

学位申請は、基礎理工学専攻で合意されたプロセスに従って行われます。 以下は、時系列を追ってそのプロセスを述べたものです

  1. 予備セミナー
    予備セミナーは、これから提出する予定の学位論文に対し、審査を開始するに値するものかどうかを判断するために、指導教員の推薦のもと、専修主任が開催します。学位申請予定者は、予備セミナーにおいて学位論文の内容を数理科学専修の教員全員に対して説明し、その後の専修会議において承認されれば、予備審査に進むことができます。予備セミナー開催時には、博士論文(下書き)、履歴書、論文目録、参考論文のファイルを準備しておくことが必要です。
    このときの論文目録には、学位論文に関連する学術論文は、予備審査の際の参考になるよう、投稿中のものも含めて記載してください。(学位申請の際に学事に提出する論文目録には、原則として投稿中のものは含めないでください。)
  2. 予備審査
    予備審査は、主査(指導教員)と副査予定者が行います。その審議結果は、数理科学専修会議に報告され、そこで承認を得ると学位申請が可能となります。
    数理科学専修では、通常、予備審査に十分な時間を費やします。
  3. 学位申請(受理申請)
    学位申請にあたっては、次の書類が必要です。
    1. 学位申請書(所定用紙による)
    2. 学位論文の要旨(和文、英文(所定用紙による))
    3. 論文目録(所定用紙による)
    4. 履歴書(所定用紙による)
    5. 参考論文ファイル

    これらを理工学部学事担当に提出します。とくに、論文目録には、

    • 学位論文に関係する学術論文(掲載または掲載受理のもの)
    • 参考論文(学位論文に直接関係しない業績)
    • 国際会議や学会等における発表記録

    などについて、指導教員の助言のもとで記載します。この申請書類は、基礎理工学専攻教員会議に諮られます。

  4. 主査、副査による審査
    専攻教員会議で学位申請が受理された後、主査・副査による審査が行われます。この段階で、主査・副査の助言のもと、学位論文を修正し完成させます。
  5. 公聴会、最終試験(語学および学力確認も含む)
    公聴会は、主査・副査出席のもと、公開で行われます。また通常、公聴会の直後に、主査・副査からなる審査委員によって、語学および学力確認を含む最終試験が行われます。
  6. 学位申請(審査)
    学事に、製本済みの学位論文1冊を提出します。また、受理申請時に提出した書類に修正や変更がある場合には、主査の先生と相談の上、再提出してください。
    特に、投稿中の論文がアクセプトになったり、アクセプトされていた論文が掲載されたりした場合には、必ず修正して下さい。
    この書類をもとに、専攻教員会議において、主査による審査報告に基づく審議が行われます。

3. 学位申請(受理申請)と、6. 学位申請(審査)の手続きの詳細については、 理工学部学事担当のホームページ「博士学位申請手続き要綱」を見てください。 いずれも、基礎理工学専攻教員会議開催日の2週間前が提出期限となっています。

語学・学力確認試験について

語学・学力確認試験については、審査を担当する委員(主査・副査)が行います。 語学については、学位論文が英文で書かれている場合には、その論文における 英文を中心に審査を行います。また、欧文論文の出版や国際会議の発表等も確認対象とします。必要な場合は、審査員による語学学力確認試験を行います。
学力確認試験は、専門に関連する学術について、質疑応答の中で確認します。

審査対象学位の種類

数理科学専修では、後期博士課程修了対象者に対し 1)博士(理学)、2)博士(工学)の 両方の審査を行います。学位の申請にあたっては、指導教員と よく相談をして、学位の種類を決めてください。

その他の相談

博士課程在学中のさまざまな問題については、基本的には担当の指導教員に相談してください。
必要があれば、専修主任、大学院学習指導の先生の他指導教員以外の数理科学専修所属の先生方にも相談をしてください。 メールでも構いません。
その他、必要事項についてはK-LMSや掲示板を通じて連絡します。
K-LMSからの連絡を常に確認できるようにしてください。
また、数理科学専修掲示板・数理科学科掲示板をよく見てください。

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