セミナー

力学系セミナー

タイトル 2次写像とエノン写像の最初の分岐
開催日時 2014年9月3日 13:00-14:30
主催者
講演者 高橋 博樹氏 (慶應義塾大学)
場所 矢上キャンパス 14棟735
内容 力学系理論は、常微分方程式、発展型偏微分方程式や差分方程式
(写像の反復合成)などの方程式の解の振舞いを定性的に調べることを目標にする。
力学系の定性的な性質を位相的な方法を用いて解析する方法はすでにPoincar\'eによって19世紀終わり頃には用いられ、その後Birkhoffによって発展させられたが、1960年代にSmaleの研究と応用分野における「カオス」の発見により一つの確立した分野となった。

力学系理論における重要な概念のひとつに「構造安定性」があり、これは力学系の位相的な構造が外部からの摂動で本質的には変化しないことを意味する。Smaleは構造安定性を力学系の一様双曲性や推移性で特徴づける「構造安定性予想」
を提出し、これは90年代にMa\~n\'eや林修平によってC^1級位相の下で
肯定的に解決された。ただ、この解決や関連する研究が明らかにしたことは、力学系の中で「構造不安定」なものが大部分を占める、という事実であった。

一方で、1960年代から70年代には計算機の発展によって応用分野では様々な力学系で時間発展が非常に複雑になる現象が発見され、これらはYorkeによって「カオス」と名付けられた。現在では、カオスは非線型の力学系に普遍的に現れる現象であることが
理解されている。また、カオスが現れる力学系の多くは構造不安定である。

このような事情から、現代の力学系理論の最重要課題は構造不安定な力学系の研究となった。
本講演では、そのような力学系でも基本的な2次写像とエノン写像を取り上げ、エノン写像の最初の分岐について講演者が以前に得た結果[4]を2次写像のそれ[2]と比較しながら述べる。


参考文献
[1] Benedicks, M. and Carleson, L.: The dynamics of the H\'enon map.
Ann. Math. 133, 73--169, 1991

[2] Jakobson, M.: Absolutely continuous invariant measures
for one-parameter families of one-dimensional maps.
Commun. Math Phys. 81, 39--88, 1981

[3] Palis, J. and Takens, S.: Hyperbolicity & Sensitive Chaotic Dynamics
at Homoclinic Bifurcations. (Cambridge Studies in Advanced Mathematics Vol 35)
Cambridge University Press 1993

[3] Takahasi, H.: Prevalent dynamics at the first bifurcation of H\'enon-like families.
Commun. Math. Phys. 312, 37--85, 2012
資料
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