今度こそ AmSLaTeX

        まえがき


現在, 私が住んでいる日吉には, おいしいケーキを食べさせて くれるお店が数件ある. その中で, 以前からお気に入りの お店は, 「ぶどうの家」である. 店内はそれほど広くはないが, ケーキは自家製 でなかなかおいしい. ただし, 田舎者の私である ので, グルメ人にはお叱りをうけるかもしれない. 特に, このお店は 私の帰宅途中にあり, 最近では一人で立ち寄ることも多い. 店内に入るとケーキを並べたショウケースがあり, 今日食べるケーキを 横目で偵察してから, 席に着くことになる. 特に, 目新しいケーキを見ると, 心が浮き浮きして早く食べたいなあと思うのだが, 生まれつき天の邪鬼なので, ついいつも食べている エーデルワイスを注文して しまう. ケーキを一つ食べるにも後悔の連続である. まったく困ったものだ.

ところで, このお店とTeX とどんな関係があるかというと, 深い因果関係はまったくない. ときどき私はこのお店でケーキを食べながら TeX で書いた文書の虫取りを行なうのである. しかし, 普段はぼんやりと窓の外を往来する人々を眺めてほんのひとときを 過ごすことにしている. TeX, テック, てっく, 哲句と考えながら. また, ときには 世間の風あたりが強いと破れそうな自分のはかない身を思いながら, 熱いコーヒーをススリ飲むのである. 結局, 自己の無能無芸を思い煩いながら.

AmSLaTeX とは, どこかで聞いた名前だとお思いの人も多いのではないか. これは, LaTeX と AmSTeX のよい所を摂取して制作された ハイブリッドな TeX である. どちらかといえば, 基本的なコマンド 体系は LaTeX に近いので, LaTeX ユーザにとってはこんな便利な ものはない. おまけに従来の LaTeX では満足のいかなかった数式の記述 能力が AmSTeX なみに向上した優れたシステムである. また, AmSTeX ユーザにとっても, 今までplain TeX 流のコマンド 指定をしていた所が, 簡単な LaTeX 流のコマンドを使って記述できるので TeX がさらに身近に感じられるようになるであろう. 特に, AmSLaTeX では従来の` article' や` report' や `book' などのスタイルファイル を利用することもでき, 標準的な LaTeX と同じ文書整形を行なうことができる. その上, スタイルオプションの指定により, 数式のできあがりはAmSTeXに 匹敵するものを作成することができるようになった. このシステムは, \LaTeX{}\ V.~3.0\ への足掛かりとでもいえるものである.

本書は, AmSLaTeX V. 1.1 の解説書というよりむしろ例題集である. 無能無芸な風羅坊が書いたものなので, 解説よりも やたら例題が多くなってしまった. できれば本書を読んで理解するだけでなく 掲載した例題を参考にして 実際に AmSLaTeX V. 1.1 を使ってみてほしい.

 
         TeX の戸開いてみればなぞばかり
                                      下町のてっ苦にしゃん

TeX を使えば使うほど, 「なぜ」, 「なぜ」という疑問が起こることだろう. しかし, TeX にだんだん精通してくると, その疑問も自然に 解決されてゆくにちがいない. TeX, LaTeX, AmSTeX の次は, 今度こそ「AmSLaTeX」. さあ, みんなでがんばろう.

本書は, 日本語化した AmSLaTeX によって全面的に 記述してあることはいうまでもない. また, 掲載した「からくり人形」の図 は, LaTeX の`picture' 環境を使って記述している.

最後に, 日頃からなにかとお世話になっている 慶應義塾大学理工学部数理科学科と 大学院理工学研究科計算機科学専攻の皆さんに 心からのお礼を申しあげたい. また, 校正を手伝ってくださった慶應義塾大学理工学部 数理科学科の本田郁二先生, 理工学研究科計算機科学専攻の大学院生の鎌田敏之君, 中丸幸治君, 富士ゼロックスの廣瀬陽一さん, 共立出版bit 編集部の小山透さん, 編集部の吉村修司さん にも感謝する次第である. 資料の面や草稿の検討でご協力いただいた 慶應義塾大学理工学部電気工学科の大野義夫先生や 理工学研究科管理工学専攻の大学院生の松永賢次君にも大変お世話になった. どうもありがとう.

                          1991年9月

                          野寺 隆志


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