これは, 1992年1・2月号の「蟻塔」に掲載されたものである.

近頃, 日本のテレビ局は, めっきりアメリカのテレビドラマを放映しなくなったと 思う. 小生の子供の頃は, アメリカのテレビドラマが毎日ゴールデンアワー に放映されていた. 日本のテレビ局の制作するドラマはなかったわけではないが, 小生の記憶に残っているものは, 指を折って数えることができるくらい少ないのである.

特に, 小生は田舎で育ったので, テレビで放映される外国の映画やドラマが 異国文化に接するただひとつの方法であった. 実際に, 外国の人々に初めて接したのは, 小学生の修学旅行に 京都を訪れた時であったように思われる. 当時は, 外国人とみると誰かまうとなくサインをねだる 悪ガキの一人であった.

大人と子供が共に楽しめるTV番組のひとつに, 金曜日の夜の8 時から放映されていた異才 ウォルト・ディズニー制作の『ディズニーランド』 をあげることができると思う. これは, 毎回, 冒険の国, おとぎの国, 未来の国など 異なる国々を訪れる構成になっており, 自分があたかもその国を訪問する主人公であるような錯覚を起こさせる 楽しい番組であった. この番組は, 1958年から9 年間わが国で放映されたと思う. たぶん同じころだったと思うのだが, 『ミッキーマウス・クラブ』という アニメ番組も放映されていたのではないかと思う. しかし, 子供にはもっと面白いアメリカのTV番組が一杯あったのである. それらの番組は, 決して一流の作品とはいえないが, 子供心を無心に くすぐるものがあったのである.

アメリカのテレビドラマで 現在でも記憶に残っているのは, 『スーパーマン』が第一で, 『アニーよ銃をとれ』, クリント・ウォーカー主演の『シャイアン』, ウェイド・プレス主演の『コルト45』, 『ララミー牧場』, チャック・コナーズ主演の『ライフルマン』, 『名犬リンティンティン』, 『ブロンコ』, 『ガンスモーク』, 『拳銃無宿』, 『ボナンザ』, クレイトン・ムアー主演で若山弦蔵さんが吹替えをされていた 『ローンレンジャー』, ジーン・バリー主演で拳銃とカードの達人である『バットマスターソン』, などの西部劇ものがある. 『ボナンザ』は, 牧場を経営する親子がくり広げる物語であり, 後年, 『大草原の小さな家』の制作と父親役を演じたマイケル・ランドン も最年少の弟の役柄で主演していたように思う. また, 西部劇ではないが『ロビンフッドの冒険』, 『ちびっこギャング』や『快傑ゾロ』なども子供の間では人気が高い番組 であった. フトッチョのガルシア軍曹はなかなか滑稽であり, 憎めない存在のひとりであった. 名脇役のひとりである.

なお, ジーン・バリー主演の作品でもうひとつ印象に残っているドラマは, 『バークにまかせろ』である.

番組が「♂♀ $\dots$ ∞」と黒板に描かれる所から始まる 『ベンケイシー』は, 金曜日の午後9 時30分から1 時間 TBS 系のネットを通して放映されていたと思う. ケーシー(ビンセント・エドワート) の外科医としての 沈着冷静な患者への対応は, 見ている人々の感動を呼び起こしたものである. さらに『ルート66』, 『サンセット77』, 『サーフサイド6』 もよく見た番組であった.

戦争ものも人気の高い番組の一つで, ビック・モロー主演の『コンバット』 あげることができる. そのほか, デビット・ジャンセン主演の『逃亡者』や 弁護士『ペリーメースン』, マイケル・コナーズ主演の『タイトロープ』, ケネス・トピー主演の『冒険ヘリコプター作戦』も 見逃せない番組の一つであった.

ホームドラマの中にも, すばらしい作品がいくつかあったように思う. 例えば, 『パパはなんでも知っている』, 『うちのママは世界一』, 『パパだいすき』, 『マッコイじいさん』 などがある. たぶん, 『パパはなんでも知っている』であったと思うが, このドラマのダイニングキッチンに登場する電気冷蔵庫の大きさは, 田舎者の小生にとってびっくり仰天させられたものである. 物の豊かなアメリカの姿を見せつけられているようであった. 当時, わが国では電気冷蔵庫や洗濯機が普及し始めた時期でもあったが, あんな大きな電気冷蔵庫は, 田舎の一般家庭にはなかったのである. 我が家に電気冷蔵庫や電気洗濯機が最初るやってきた日は, いまでも はっきりと記憶している.

いまでは, これらのドラマの ほとんどストーリを忘れてしまったが, ただ一つ記憶に残っている 場面がある. それは, 睡眠学習を利用して外国語(多分, フランス語の会話の勉強ではなかったかと思う) を勉強する場面があり, 何かの拍子で お父さんがうっかりフランス語を睡眠学習してしまうのである. お父さんは, フランス語を睡眠学習したことを全然気づかないのだが, 朝食を食べているときに, やたらとフランス語を話すので, 家族がちょっと 首を傾げる場面があったように思う. そのとき, お母さんと娘か顔を見合わせてクックックと微笑んだのを 記憶しているのだが. なにぶん遠い昔のことなのでこれらの話にも 記憶違いがあるかもしれないのでお許し願たい.

以前, 小生もこの睡眠学習を試したことがあるが, このドラマのように 画期的な効果はあがらなかったことはいうまでもない. 睡眠学習の効果には個人差があり, 小生にはこの学習方法が向いていない と判断し, 早々にとりやめた覚えがある. しかし, 現在でもこの睡眠学習の場面を覚えている所をみると, 小生にとって 相当インパクトのあった事柄の一つであったのだろう.

なお, ルーシー・ルポール主演の 『アイ・ラブ・ルーシー』(後年, 『ルーシーショウ』) も面白い番組の一つであった. ルーシーは美人ではあるが, やることなすことすべてドタバタ であり, 現在の日本のタレントでいえば, バラエティドラマの山田邦子さんのような存在であった. ちなみに山田邦子さんは, 現在, もっとも小学生に人気のある女優であるらしい. 『ルーシーショー』は, アメリカでも人気の高かった番組の一つであり, 多分現在も何処かの放送局から再放映されているのではないかと思う.

ホームドラマとしてすごい人気があった番組をもうひとつあげると, 『名犬ラッシー』ではないだろうか. これは, ティミー君とコリー 犬のふれ愛い物語りである. この番組は日本の飼犬にコリー犬のブームを巻き起こし, 当時, コリー犬はすべて ラッシーという名前がついていたといっても過言ではない.

貧しい日本の茶の間の白黒テレビで見ていたこれらのアメリカのテレビ ドラマは, 小生の目にはまぶしくうつり, あこがれをかきたてられる ものがあった.

時代はすこし新しくなるが, イルカが登場する 『わんぱくフリッパー』や馬と人間の交流を描いた 『名馬フリッカ』も印象に残っている番組のひとつである.

『バットマン』は『スーパーマン』なき後の アメリカンニューヒーローの一人であるにちがいない. この番組を見ていて一番感じたことは, あらゆる場面でスピード感があふれ, 殴り合いの場面に擬音を出すだけでなく, 画面に劇画調の文字を表示してしまう ことであった. すなわち, 漫画のように擬音を文字化して見せる, 当時としては画期的な制作方法の一つであったと思われる.

バイオレンスものでは, 無名時代のブルース・リーが助手兼運転手役で出演 していた『グリーンホーネット』がある. 刑事や警察官もののドラマとしては, プローデリック・クロフォード, ウイリアム・ボイヤット主演の『ハイウェーパトロール』, ジョーン・ヘイズ主演の『ジャングルパトロール』, エフレム・ジンバレストJr. 主演の 『FBIアメリカ連邦警察』, レーモンド・バー主演の 『鬼警部アイアンサイド』などをあげることができる. また, スパイものとしては, 悪の組織ケイオス(chaos)と戦う 『それゆけスマート』, ピーター・グレーブス主演の 『スパイ大作戦』, デビット・マッカラムとロバート・ボーンが主演し, 多少軟派な2 人組の諜報員が活躍する 『ナポレオンソロ』などがあった. 『それゆけスマート』は, ギャグをふんだんに取り入れた お笑い番組的な要素を多分に持つストリーであり, 悪の組織の名前がケイオス(わが国ではカオスと呼ばれることが多く, 最近よく耳にすることばの一つである) と名付ける所など, お笑いもののではあるがなかなか格調高い 悪の組織名である. なかなか敵もさるものである.

『スパイ大作戦』の原題は, ``Mission Impossible''である. 毎回必ず「おはようフィリップス君, コロンビアのボゴタは かってラテンアメリカのアテネと呼ばれたが, 今は戦火の 町と化してしまった. 麻薬カルテルが政府に宣戦を布告し, ....... そこで君の使命だが ...... することにある. 例によって君もしくは君のメンバーが捉えられ, あるいは殺されても, 当局はいっさい感知しないからそのつもりで. なお, このテープは自動的に 消滅する. 成功を祈る.」 というような当局(IMF) からの司令で始まる. 大平透さんは, このナレーションだけに登場するが, 非常にインパクトが強かったように思う.

この司令を伝えていたのがオープンの小型テープレコーダーであり, 非常に 珍しいものであった. 当時は, 現在のウォークマンのようにテープレコーダが普及しておらず, 小生はほしくてたまらず, 両親にねだった覚えがあるが, なかなか買ってもらえなかった. 実際に, 両親に テープレコーダ(松下電気のRQ-705)を買ってもらったのは 中学生になってからであった. このテープレコーダは録音再生ヘッドを何度も取り替え, 現在も 小生の実家に健在である.

この時代の少年雑誌には, テレビドラマの主題歌を集めた ソノシート(青色や赤色の薄いペラペラなレコード)の通信販売があり, 小生も購入した覚えがある. このソノシート, 入っている曲の数だけに関しては多い. しかし, 音が今一つで, 当然, オリジナルの演奏者のものではなかった. たぶん, アルバイトの学生 を使って録音したものであると思うが, 通信販売の広告には いっさいその事実は掲載されていなかったように思う.

『スパイ大作戦』は, ハイテクの製品を駆使して 敵を欺き任務を遂行する所は当時として圧巻であり, 毎回, 胸驚かせながら楽しみにしていたものである.

近年, 『スパイ大作戦』の新シリーズがわが国でも放映されたが, IMF からの司令はテープレコーダではなく, 2 インチのコンパクト ディスクに変り, 映像も同時に見ることができる 超小型の装置になっている. これはソニーが開発したデータディスクマンをモデルにしている のではないかと思われる.

この『新スパイ大作戦』のシリーズでは, ラップトップ型の コンピュータを使い過ぎる所があり, これがちょっと鼻に付くが, メンバーの絆を大切にする所は 小生の少年時代に放映された旧シリーズと変っていないように思う. なんでもかんでもコンピュータまかせでうまく行くところが, ちょっと気にいらない点ではあるのだが. また, ゴムのマスクを使って変装する所など, 日本の探偵ドラマ(例えば, 明知小五郎シリーズなど)の制作に多くの影響を与えたようだ. ただし, 以前は石膏型を使ってゴムのマスクを作っていたが, 新シリーズ では, コンピュータを搭載したマスクメーカーと呼ばれる アタッシュケース大のマシーンを使っている.

この新シリーズの中で使われる小道具の中で, 先日, 「面白いなあ」と関心したものは, カラー液晶ディスプレイを白紙のトランプに張り付け, どんなカードにも 変えることができるようにしたものである. 当然, イカサマをするために開発されたもので, こんなトランプがあったら, ギャンブルのメッカ ラスベガスの遊戯場も真っ青になるだろう.

『スパイ大作戦』は, 新旧のシリーズとも ジム(ピーター・グレーブス)をボスとする4 人のメンバー(内一人が女性) が一丸となって活躍する, いうなればチームプレイの作品であるが, 個人プレイの作品もないわけではない. それが, 『冒険野郎マクガイバー』であり, 原題は``{\sc Macgyver}''で ある.

この『冒険野郎マクガイバー』は, 次のようなナレーションで始まるのである. 「冒険野郎マクガイバー, 地球上では何が起こるかわからない. 不正, 陰謀, 破壊, 世の中, 常に悪が渦巻き, 平和を愛する人々を 脅かす. 正義を愛する冒険野郎マクガイバーは, 世界をまたにかけ 事件を解決してゆく. ちょっぴり恋もあり, ユーモアもあり, 手に汗にぎるアクションドラマの大傑作, 冒険野郎マクガイバー. リチャード・リン・アンダーソンの魅力もたっぷりお楽しみください.」 ただし, これは, 日本でのみ挿入されるナレーションである ことはいうまでもない.

この作品を見れば, マクガイバーがいかにすごい男であるかがおわかりになる と思うが, その風貌はべっに変哲のないハンサムなおじさんである. マクガイバーは, 健康管理にかなり気を使っており, 豆乳を飲み, ヨーグルトや ミネラルに富むアルファルファを好んで 食べているようだ. 最近のスパイは, 体力作りだけでなく 健康管理にも気を使っているということらしい. 特に, マクガイバーが豆腐を食べているのではなく豆乳を飲んでいる所が, なんとなくこの作品のすごさを感じさせる.

実際, マクガイバーはスパイなのか冒険家なのか, 放映される映像からは はっきりよくわからない. どうも正義を守るために働いているらしいのだが, 困っている友人がいると 個人的にそれを助けることに骨身を惜しまないのも事実である. このマクガイバー, ドラマの中ではFBI やCIA という国家機関には所属せず, ピーター・スウォントンが所長を務める フェニックス財団と呼ばれる民間機関で働いていることになっている.

マクガイバーが, 007 シリーズに登場するジェームスボンドと違う所は, 決して拳銃を持たず, 人も殺さない点である. 秘密兵器の類は, いっさい持たないし使わない. この点に関していえば, 日本の時代劇の『遠山の金さん』に似ているようにも思う. しかし, マクガイバーは, 日常生活の中に転がっているもので, 必要なものを制作してしまう のである. 特に, 彼のポケットの中から出てくるガラクタをよく利用する.

例えば, 山奥の石油探索を行なっている山小屋で, 電気容量のオーバを起こし 電気のヒューズがとんで無くなってしまったことがある. マクガイバーはおもむろにポケットから チューウィンガムの銀紙をとりだし, ヒューズの代用にしてしまう. このことを聞いたら, 東京電力も真っ青というところだろう.

チューウィンガムの銀紙の話をもう一つすると, つりのルアーを この銀紙で作ってしまう話も登場した. チューウインガムをよく理由の一つは, アメリカ人にとってもっとも馴染み のあるお菓子であるからであろう.

建築資材のコーキング用のコンパウンドに凝固在を入れて接着剤を 作り一騒動起こしたりもするし, 電球を割り中の針金を使って鍵の代用品として錠前をあけたりもする. また, アマゾンの奥地での話であるが, 水車を利用した 発電機のピストンにヒビが入ったときなど, \$1.00硬貨を使って電気溶接を行ない, ピストンのヒビ割れ を修繕したこともある. また, 現金輸送車に閉じ込められた男性を救出するのに, スピード競技用の自転車の車体を分解し, 車体のフレームの一部を削って溶接用のトーチを作り, それを使って鉄の扉を焼ききり, 中に閉じ込められていた男性を救出したこともある. これはスピード競技用の自転車のフレームが, 車体を軽量化するために マググネシュームを多く含むジュラルミンで作られているからだ.

このシリーズに 一番よく登場するものは, やはり車の故障をすばやく代用品で直すことであろう. 例えば, リンケージスプリングが折れたときなど, ボールペン に使われているスプリングを取りだし, それを使って簡単な応急修理をしてしまうのである. また, バッテリーの電解溶液がなくなったときには, ちょっともったいないが白ワインで代用したこともある.

彼は特殊な武器や道具は使わず, 必要とするものは ポケットにいつも持っている スイス製のアーミーナイフひとつを使って どこにでもころがっているガラクタを 再利用して作り出してしまう. 発明家ではないが, 工作やいろんなものを組み合せて 利用する応用能力に非常にたけた人物で あるようだ.

マクガイバーは, 物理や生物化学に強く, おまけに工作の能力も 持ち合わせ, さらに冒険好きで大自然を愛し, リサイクルにも貢献し, 健康管理にも十分気を使っている. ただし, マグガイバーにも弱点がひとつだけある. それは, 彼が高所恐怖症であることだ. 現代版のスーパーマンは, こんな人間味あふれる男性なのかもしれない.

これまでに放映されたドラマには, 兵隊アリから農園を守る もの, 某国に捉えられた物理学者の救出作戦, 油田火災の 消火, 原子炉のメルトダウンの回避, テロリストからの 人質救出などをあげることができ, このシリーズのどれを見ても興味深いものがある. また, マクガイバーは多少三枚目的な役作りになっている ところも小生は大変気に入っている.

もう一人, 現代のヒーロといってよい人物がいる. それは, 『FBI 特別捜査官』に登場するニック・マンクーゾである. 彼は, 昔放映された『FBIアメリカ連邦警察』に登場する エフレム・ジンバレストJr. が演ずるエリートの捜査官ではない. ひとことでいえば, FBI の中でもおちこぼれの部類に 属する捜査官である.

この番組は, 次のようなナレーションで始まる. 「俺の名は, ニック・マンクーゾ. 人呼んでFBI のローンウルフ. へそ曲りのFBI 捜査官と呼ぶやつもいる. だが, 俺は 国を愛し, 社会正義を愛している. とかく, この世の中, 悪事が横行し, ゆがみぱなしだが, 降りかかる火の粉ははらわねばならぬ. そのためには, いかなる危険だろうと, 圧力だろうと決して屈しない. 社会正義を守ために突っ走る. それが, この俺, FBI のローンウルフ, マンクーゾだ.」 いうなれば, この番組はピータ・フォークが 風采のあがらない刑事役で主演した 『刑事コロンボ』のFBI 版ということができる. この物語の中では, マンクーゾはイタリア系のアメリカ人という役柄で, ロバート・ロジアが演じている. 一見すると, よれよれのおっさんだが, なかなかのきれ者である ところは刑事コロンボとよく似ている. ただし, 気性がさっぱりしていて コロンボほど物事にこだわらない所が現代的な役作りになっており, ときどきポカもする. 熱血漢であり, 人情家で, そのうえカンツォーネをとびきり 上手に歌うおっさんである.

ドラマは, 企業買収, 収賄, 爆弾テロ, 麻薬犯罪, マフィアなど を扱った作品が多く, 現在アメリカが直面している問題を 多く扱っている. これらの作品はいつもどんでんがえしの結末で終わることが多いのも 作品をおもしろくしているひとつの要因である.

FBI の捜査員をあつかった番組は以前からあるが, 時代とともにその扱い方もずいぶんかわるものだと, 『FBI 特別捜査官』を見て感じているしだいである.

このほか, 現在のアメリカのごく平凡な一般家庭が抱えている問題を 取り扱った『ナイス・サーティーズ』やロサンゼルスのある弁護士 事務所に働く7 人の弁護士たちとそれを取り巻く人々を扱った『LA LAW』も なかなか興味深い番組である.

現在, 我が国では放映されていないが, 『フラッシュ』というニュー ヒーローがアメリカにはいるらしい. 彼もマクガイバーと同様に武器は持たないが, かつて日本のテレビアニメ で人気が高かったエイトマンのように, 超高速で移動することができる特技がある.

また, ホームドラマでは, 数年前にNHK で放映していた『がんこじいさんと 孫三人』(原題はOur House)も現在のアメリカの家庭が直面している 多くの問題を, おじいさんと孫三人がくりひろげる日常茶飯事の出来事を通して 解決し, 親と子供の絆を確かめ合うものであった. 小生の子供の頃に見た『うちのパパは世界一』と比較すると, 現代のアメリカが直面している家庭環境の 問題の多さにびっくりさせられてしまうのも事実である. どうも豊かな社会になれば, 人間の心も豊かになるのではないらしい. そんなことをおじいさんとその家族を通して感じさせられる ほのぼのとした番組であった. この番組は, アメリカでは全国ネットで日曜日の午後7:00からの ゴールデンタイムで放送していたと思う.

なお, 近年NHK で放映された『コウキーとともに』は, ダウン症の子供を持つ 親と子供のふれ合いを様々な日常の出来事を通して描いたものである. 人々の心のすみずみまで浸透した物質主義, 拝金主義, 権威主義や利己主義との葛藤 をコウキーを取り巻く人物を通して描くドラマである. 自分の本当の生きがいとは何かを考えさせられる作品の一つであった. このドラマを見ていると, 現代のヒーロは特殊なことができる人々 ではなく, 自分の身近にいる普通の人々のようだ.

少年時代に見たテレビのヒーロを振り返りながら アメリカの新しいテレビドラマに登場するヒーロを外観してきた. しかし, どの番組にも共通するのは, 自分たちの人生をはっきり 前向きに考え, 自分の人生を精一杯生きるという バイタリティを感じさせる作品が非常に多いことである. 伝統や様式を持たないアメリカは, いつもヒーロを「今」に求めている のではないかと思う.

ただし残念なことに, 現在これらの番組は, わが国では 真夜中に放映されることが多いので, 小生はビデオの御厄介になり, 休日には柿の種をほうばりながら カウチポテトになるのである. 最近の流行語では「おたく」というのかもしれないが, 単に家でごろごろしている日本のお父さんと同じなのである.


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