アブストラクト: 言語ルール2:因果関係とは何か?
測定理論(=量子言語)は次の分類を持ち。

$(A):$ $ \underset{(=\mbox{ 量子言語})}{\mbox{ 測定理論}} \left\{\begin{array}{ll} \underset{\mbox{(A$_1$)}}{ \mbox{純粋系}} \left\{\begin{array}{ll} \!\! \mbox{古典システム} : \mbox{ フィッシャー統計学} \\ \!\! \mbox{ 量子システム} : \mbox{ 通常の量子力学 } \\ \end{array}\right. \\ \\ \underset{\mbox{(A$_2$)}} {\mbox{混合系}} \left\{\begin{array}{ll} \!\! \mbox{ 古典システム} : \mbox{ ベイズ統計学,} \\ \qquad \qquad \qquad \mbox{ カルマンフィルタ} \\ \!\! \mbox{ 量子システム} : \mbox{ 量子デコヒーレンス } \\ \end{array}\right. \end{array}\right. $
次のように定式化される:
前章までで残されているのは、 $$ \underset{\mbox{(cf. 10.3節)}}{\overset{\mbox{言語ルール2}}{\fbox{因果関係}}} $$ だけで、これをこの章で説明する。


それにしても、ここまでは、 「測定」 だけに関わったことに注意しよう。
「科学=因果関係の学問」 といってもいいほど重要な 「因果関係」 が、 この第10章でやっと出てきたとは、驚きだろう。






$\S$1.1で述べたように, 我々の目的は次図を主張することである:
  • 世界記述史の中での量子言語の位置
上図(特に, ⑦--⑨)から、量子言語は次の3つの特徴をもつと言える: $$ \left\{\begin{array}{ll} \mbox{ ⑦ :量子力学の標準解釈} \\ \mbox{ $\qquad$ (i.e.,コペンハーゲン解釈の真の姿) } \\ \\ \mbox{ ⑧ : 二元論的観念論 (デカルト=カント哲学)の終着点 } \\ \\ \mbox{ ⑨ : 未来の理論統計学 } \end{array}\right. $$

ただし、「量子言語を思いつく」という観点では、量子力学からの⑦が最重要で、 哲学の⑧と統計学の⑨は知らなくても、量子言語は提案できた。 事実、著者は、哲学と統計学をよく知っているわけではない。

  • 量子言語の発見は、⑦経由だけであって、
    ⑧,⑨経由では不可能と思う

というのは、 ⑧経由で可能ならば、ライプニッツが「古典測定理論」を発見していてもおかしくないと考えるからである(cf 10.7節の注釈10.6).

それにしても、
$\bullet$ 近代哲学(デカルト、ロック、バークリー、ヒューム、ライプニッツ、カント、ウィトゲンシュタイン等)の

  • 過大な評価 中身の無さ と の コントラスト

は一体どういう風に理解してよいのだろうか?
著者は、

  • ニュートン主義に対する本能的な反発が過大評価を生んだ

と考えている。
それにしても、

  • 反ニュートン主義が本当の意味で成功した歴史はないわけで、
    「量子言語」は成功するのだろうか?