講演のタイトルと概要(新しい順に並べてあります)
Titles and Abstracts
- 1月22日(金)
場所, 時間:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟 128号室 15:00-18:00
- 篠原 克寿 氏(一橋大学大学院・商学研究科)
- 区分線形写像のゼータ関数とアナログ・デジタル変換器の精度保証
- Abstract:
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β展開に基づいて設計されたアナログ・デジタル変換器を
β変換器と呼ぶ.β変換器の変換精度評価を行うには,傾きがβの区間上の 区分的線形写像の力学系から定まる種々の量の数え上げをする必要がある.
これらの情報は対応する力学系のゼータ関数の零点を調べることで得ることが可能である.
区分的線形写像のゼータ関数(正確には対応するペロン・フロベニウス作用素の母関数としてのフレドホルム行列式)に関して,いわゆるβ写像の場合は伊藤俊次氏,髙橋陽一郎氏による結果が有名であるが,一般の区分的線形写像の場合の明示的な公式は森真氏により得られている.
本セミナーでは,これらの手法を用いてβ変換器の精度評価(近似式ではなく,厳密な不等式) を与える方法に関して説明する.
- 12月4日(金)
場所, 時間:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟 126号室 15:00-18:00
- 荒井 迅 氏(北海道大学大学院・理学研究院・数学部門)
- On the parameter loci of the Henon family
- Abstract:
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エノン写像族で馬蹄形が崩壊する瞬間の分岐について、
九州大学の石井豊氏との共同研究で得られた成果を紹介する。
特に議論の鍵となる Crossed mapping condition という条件について、
その有用性と検証方法を中心に解説する。
- 11月6日(金)
場所, 時間:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟 128号室 15:00-18:00
- 平山 至大 氏(筑波大学・数理物質科学研究科・数学専攻)
- 体積を保つ可微分力学系の葉層構造とエルゴード性
- Abstract:
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体積を保つ推移的Anosov系はエルゴード的である.この古典的結果および手法の,弱い双曲性をもつ力学系への拡張について,鷲見直哉氏との共同研究による成果(特に接触する葉層対に付随するホロノミー写像に関する評価)を交えて紹介する.
- 9月25日(金)
場所, 時間:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟 128号室 15:00-18:00
- 高橋 博樹 氏(慶應義塾大学・理工学部数理科学科)
- Large deviation principle and its universality in one-dimensional dynamics
- Abstract:
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大偏差原理は「大数の法則」「中心極限定理」に次いで「確率論の第3の原理」とも呼ばれ、
測度が集中がする点からの``ずれ"の確率を問題にする。力学系で大偏差原理が成立するかどうか
調べることは、決定論的時間発展が生み出すランダムネス(=カオス)を確率論的に理解する上で
重要である。
本講演では、区間[0,1]からそれ自身への可微分写像の反復合成が生成する一次元力学系を考える。
周期点の双曲性と臨界点の型、および写像の位相混合性に関するきわめて弱い条件のもとで、
大偏差原理が成り立つことを示す。この条件をさらに弱めることは困難であり、我々の結果は
決定的なものと考えられる。
一次元力学系の極限定理や統計的性質などを証明する際、通常は臨界点の影響をコントロールする
ために臨界値の軌道に沿う微分が十分速く増大する、などの条件を仮定する。我々の結果は
こういった条件を全く仮定しない、専門家にとって意外な結果である。
臨界点の個数が1で、それが極値点であるようなものはunimodal map (単峰写像)と呼ばれる。
unimodal mapは(i) 吸引周期点をもつ (ii) 無限回繰り込み可能 (iii) 高々有限回繰り込み可能、
の三つのタイプに分類される。(i) は双曲理論の範疇に入り、(ii) の理解も進んでいる。
絶対連続不変確率測度やwild Cantor attractorを持つものは(iii) に入る。
2次写像族などの実解析的なunimodal mapのパラメーター族では、Lebesgue測度に関し
ほとんど全てのパラメーターについて (i )か (iii) である(Lyubich, Avila&Lyubich&de Melo)。
また (iii) のLebesgue測度は 正である(Jakobson, Benedicks&Carleson)。
我々の結果より、大偏差原理が (iii) のタイプの任意のunimodal mapについて成立することが従う。
特に、physical measureが存在せず(Keller&Nowicki)、従って測度の集中がない状況で
大偏差原理が成立する、という一見すると不思議な現象が起きる。
これらのことは、大偏差原理がきわめて広いクラスの力学系のダイナミクスを統制する
普遍的な原理であることを示唆しているように思われる。
(鄭容武氏(広島大学)、Juan Rivera-Letelier氏(Rochester大学)との共同研究)
- 6月5日(金)
場所, 時間:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟 128号室 15:00-18:00
- 浅岡 正幸 氏(京都大学大学院・理学研究科)
- Growth rate of the number of periodic points in step skew-products
- Abstract:
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力学系の周期点の数の増大度は,Artin-MazurやShubらによる古典的な結果など,
よい状況では高々指数的となることが知られていた.しかし,
Kaloshinはhomoclinic 接触からの摂動により多くの周期点が現われうることを示し,
それによって2次元微分同相写像の場合にNewhouse領域にお
いては与えられた任意の増大度よりも速い増大度を持つ系がgenericとな
ることを証明した. では,Newhouse領域から離れている非双曲力学系の典型である,
(非双曲的)部分双曲系では,周期点の数の増大度はどうなっているのか,と問うのは自然である.
最近,篠原克寿氏,Domitry Turaev氏との共同研究によって,
部分双曲系の単純化されたモデルであるシフト上のstep
skew-productにおいても,Kaloshinのものとは異なるメカニズムによって
ある自然な条件のもとで与えられた増大度よりも周期点の数の増大度が速
い系がgenericになることが証明できた.本講演ではこの結果についての報告をしたい.
- 5月29日(金)
場所, 時間:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟 128号室 15:00-18:00
- 須崎 清剛 氏(東京大学大学院・数理科学研究科)
- Some results for leafwise diffusions obtained via SDE approach
- Abstract:
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foliated spaceは力学系やfoliationの一般化と考えることができ、
その上の葉に沿ったパスをもつ拡散過程であるleafwise diffusionと
その拡散不変測度であるharmonic measureがfoliated space上のエルゴード理論
の中で重要な役割を果たす。
この講演では確率微分方程式を用いたleafwise diffusionの新たな構成が、
その過程の出発点に関する依存性や中心極限定理などの様々な問題へ
非常に有効なアプローチを与えることを述べるとともに、
現在までに得られている結果を紹介する。
- 4月24日(金)(臨時)
場所, 時間:慶應義塾大学矢上キャンパス 14棟631-A 9:00-10:30
- 中川 勝國 氏(広島大学大学院・理学研究科)
- 零温度極限とmultifractal rigidity
- Abstract:
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Multifractal rigidityはマルチフラクタルスペクトルから力学系が
復元される現象を指す。この講演では、Pesinらによる区分的線型な力学系のmultifractal
rigidityについての結果とBarreiraらによる記号力学系のmultifractal rigidityについての結果を
統一・拡張する。スペクトルに付随する測度族の「零温度極限」の解析が重要である。
- 4月24日(金)(通常)
場所, 時間:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟 128号室 15:00-18:00
- 山本 謙一郎 氏(長岡技術科学大学)
- All geometric Lorenz attractors do not satisfy the specification property
- Abstract:
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In this talk, we show that all geometric Lorenz attractors do not
satisfy the specification property, which answers a question included in A.
Arbieto-L. Senos-T. Sodero’s article “The specification property for flows
from the robust and generic viewpoint”. This is a joint work with N. Sumi
and P. Varandas.
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連絡先:
斉木 吉隆 (yoshi.saiki(at)r.hit-u.ac.jp)
〒186-8601 東京都国立市中2-1
一橋大学大学院商学研究科
高橋 博樹 (hiroki(at)math.keio.ac.jp)
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慶應義塾大学理工学部数理科学科
林 修平 (shuhei(at)ms.u-tokyo.ac.jp)
〒153-8914 東京都目黒区駒場3-8-1
東京大学大学院数理科学研究科