セミナー

慶應・理科大数理オンラインセミナー

タイトル 代数のスペクトラムと代数付き空間の圏
開催日時 2022年5月26日 16:30 -
主催者
講演者 荒武永史 氏 (京都大学数理解析研究所)
場所
内容 可換環のZariskiスペクトラムの構成は、可換環の圏と局所環付き空間の圏の間の反変随伴を与えることがよく知られている。このような意味での「代数的構造のスペクトラム」について、他にも「可換環のPierceスペクトラム」「分配束の素フィルタースペクトラム」など多くの例が存在する。Michel Costeは、圏論的論理学の言葉を用いることで、これらのスペクトラムの構成を統一した。ここにおいては、可換環・局所環・局所環準同型といったクラスの三つ組の関係を圏論的に(あるいは論理学的に)うまく抽象化することが肝要である。Costeの研究は、実代数幾何学における「可換環の実スペクトラム」の発見などにも影響を及ぼした。しかし、Costeの構成はトポス理論を用いており難解かつ、構成の概略を述べた論文しか出版されておらず証明の詳細は世に出回っていない。

本講演では、Costeの枠組みを導入した後、講演者の研究(arXiv:2203.10711)によって得られたスペクトラムの別構成、およびその構成に基づくCoste随伴の別証明の概略を説明する。この構成はZariskiスペクトラムの構造層の構成の直接的な一般化になっており、随伴の証明も局所有限表示可能圏についての初等的考察の積み重ねで示せるため、Costeのオリジナルの構成よりも理解しやすい。さらに、代数のスペクトラムを「代数付き空間の相対スペクトラム」へと拡張することで、Coste随伴に現れる「局所代数付き空間の圏」の完備性を示すこともできる(実はこれは余完備でもある)。この結果は、局所環付き空間の圏の完備性(Gillam, 2011)をはるかに一般化するものであり、系として例えば「任意の茎が体になっている環付き空間」の圏が完備かつ余完備であることが従う。
資料
URL https://sites.google.com/view/keio-rikadai-online-seminar/

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