名前坂 慎弥
所属基礎理工学専攻/物理学専修
研究分野高分子物理学

緩和モード解析の非平衡系への拡張と、計算機シミュレーションを用いた結び目を持つ環状高分子への応用
 高分子は、原子分子に依存する局所的性質だけでなく、長さや濃度に依存する大局的な性質を合わせ持つ。そこで、高分子の粗視化したモデルを用いて、化学的な詳細に依存しない普遍的な性質を見つけ出すことを目的に、統計力学の知識を用いて発展したのが高分子物理学である。高分子同士の絡まり合いなどにより生じるトポロジー拘束が高分子の性質 (緩和現象など) にどのような影響を及ぼすかは、高分子物理学の重要な問題である。結び目をもつ環状高分子は、自分自身との絡まり合いを持つ系の一つであるため、トポロジー拘束を研究するにあたり、理想的な系であるといえる。
 高分子物理学では、緩和現象は緩和モードと緩和率を用いて体系的に研究されてきた。理想的な系では、緩和モードは線形Langevin方程式の基準座標によって近似的に定義された。近年になり、複雑な系の緩和モードと緩和率は、シミュレーションから得られた相関行列の一般化固有値問題を解くことで数値的に評価されるようになった。この方法は緩和モード解析(relaxation mode analysis: RMA)と呼ばれる。
 現在、三葉結び目をもつ環状高分子の緩和現象をブラウン動力学シミュレーションを用いて研究している。緩和モード解析により得られた緩和率分布から、環状高分子の構造は、鎖長が短いときには一様状態(結び目部分が高分子全体に広がった状態)、長いときには相分離状態(結び目部分は局在化し、残り部分は自明な結び目を持つ環状高分子のように振る舞う状態)と変化することがわかった。よって、結び目によるトポロジー効果は、緩和率分布のトポロジー依存性、結び目の局在・非局性の鎖長依存性を引き起こすと言える。
 COEプログラムでは、平衡系の緩和現象を解明する手法である緩和モード解析を、平衡状態から遠い非線形非平衡系に適応できるように拡張したい。特に、結び目を切ることによるトポロジー拘束の緩和を調べたい。