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名前 | 中野 直人 |
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| 所属 | 基礎理工学専攻/数理科学専修 | |
| 研究分野 | 偏微分方程式 数理物理学 |
「粉粒体運動の流体力学的モデルに対する数学解析」
私は粉粒体の振る舞いについて研究しています.粉粒体とは,用語的には,分離した粒子の集合であり,その間隙を流体によって満たされているものを言います.粉粒体としての研究対象は,その名の示す通り,粉や砂等,身近なものから,土,雪,高分子化合物等,一見すると粉や粒とは関連が無い様なものまで,幅広く存在しています.
私の主たる研究とは,粉粒体の運動を数理物理学的に解析することです.粉粒体の係わる自然現象は極めて特徴的です.例えば,エジプトのピラミッドは現在に至るまで沈むことなく砂の上に佇んでいますが,一度流砂のように流れ出すと砂はまるで水の様に流れていきます.この様に,粉粒体には固体とも液体とも付かない状態が観察され,その動的な振る舞いも静的な振る舞いも大変興味深いものです.しかし,そのメカニズムは未だ解明されたとは言えず,私はその解明の為に研究しています.
粉粒体の運動を個々の粒子の相互作用を考慮し解析するとなると,これは多体問題となり,Poincare の指摘以来解明は不可能です.そこで,粉粒体の流体的様相に着目し,流体力学に於いて流体の運動を記述するのと同様に,連続体近似を用いてその運動を解析する手法が考えられます.その運動は,連続体近似による質量,運動量,角運動量,エネルギー保存則等に従います.各保存則は偏微分方程式によって表現される為,その運動の従う偏微分方程式系の解の存在性を証明することが,私の具体的な研究内容です.不均一非圧縮流体モデルについて既に時間局所解の存在証明が得られています.
更に,粉粒体の現象を考察するに当たって重要なことは,境界に於ける粉粒体の振る舞いについてです.粉粒体が境界上でスリップすることが,その運動に対して無視できない影響を与えると言われています.これは即ち,上記の偏微分方程式系に於いて,速度場に対してスリップ境界条件を課す事に当たります.しかし,スリップ境界条件は極めて複雑で,粉粒体に限らず流体の方程式の研究に於いても,その結果は多いとは言えません.より現実の状況に沿ったモデル方程式の解析が,より深い現象の理解へと繋がることは自明です.従って,ハードルの高い研究対象とは言うものの,粉粒体のスリップ境界条件問題は今後取り組むべき問題であると言えるでしょう.また,スリップは摩擦と非常に関係が強く,物理的にも難解な現象です.スリップ状態を考慮した解析を行うことで数学的にも物理的にも発展が望めるのではないかと考えています.